1時間目 生活の問題を発見するとは?

 みなさんは,今の生活をよりよくしようと考える場合,どのような点から考えていくでしょうか?
最近,“ライフハック“という言葉をよく聞きます.


 ライフハックとは,「仕事術」「生活術」というそうです.仕事や生活を改善していくためのHow toといったところでしょうか.


 確かに,「そんな方法で簡単にこの料理がつくれるの?」「今まで苦労していたシミ汚れがそんなに簡単に!?」というライフハックは生活をよりよくするためには重要です.もちろん,簡単においしく作れたご飯を食べる,汚れが綺麗に落ちた,ということは生活の質の向上に繋がると思います.ですが,世の中には知っておいた方がいいライフハックは山ほどあります.一つ前の記事でも書きましたが,生活はとても複雑な構造でできています.

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 食べ物を買ってきて作る,服を手入れして着る,快適な住環境で住まう,家族,パートナー,ペットと一緒に暮らす,将来に向けてお金を貯める,ほしいものを買うためにお金を使う,リスクに備えてお金を運用する,子どもを育てる,親の介護する…etc


 この複雑な構造を広い視野で捉えて,「今の生活のどこに問題があるのか?」「その問題をどう解決していけばいいか?」を考えることが生活全体の満足度,ウェルビーイングにつながると考えています.これから「生活の問題を発見する」方法について解説したいと思います.

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2時間目 生活の問題を発見する方法について知ろう!

 それでは,生活の問題を発見する方法について解説していきたいと思います.生活をよりよくする方法について研究する学問領域に「家政学」があります.
みなさん,聞き慣れない学問だと思います.

 日本で初めて家政学を学ぶことができる大学として設立されたのは日本女子大学です.2015年のNHK朝の連続テレビ小説「朝が来た」で波瑠さん演じる広岡浅子さん日本女子大の創設者として有名です.現在も多くの大学で家政学を学ぶことはできます.

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 さて,この家政学で考える「生活をよりよくする方法」,実は経営学的な考えを応用しています.会社は,会社の持つ資源,例えば社員・資産・社屋・設備・コネクションなどをフル活用して,企業の利益向上や会社の成長が目的だと思います.この考えを「生活」に応用してみます.


 個人・家族が持つ生活資源,例えば食べ物・着るもの・住まい・お金・家族・地域の人などをフル活用して,個人・家族の生活や人生の目標を達成することが目的と解釈できます.このように,会社経営のフレームを生活に応用してみると,これまで見えなかったものが見えてくるように感じます.1978年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの研究者ハーバード・アレクサンダー・サイモン(1916-2001)は,『意思決定の科学(1979)』の中で,問題を次のように定義しています.問題とは,理想と現実とのギャップの原因であるつまり,理想(目標や目的)と現実・現状との間にはギャップがある.そのギャップが生じている原因を問題とするということです.

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 この問題を明確に捉えなければ,よりよい解決には繋がらないとしています.この問題の定義がどの程度経営学や経済学で認知されているかは不明ですが,このフレームは生活にとても役立つのでは,と感じています.
生活に応用してみると次のようになります.

(1)今の生活を広く捉えて現状を知る


(2)理想的な生活(近い将来,遠い将来,時間軸はたくさんあります)とはどんな生活か,どんな生活をしたいかを設定する


(3)現状と理想とのギャップの原因を突き止める


(4)そのギャップを埋めるにはどうしたらいいか考える(課題を設定する)


(5)ギャップを埋めるための計画を立て,実際に実践してみる


(6)実践結果を評価し,さらなる問題を発見するこのようなプロセスで生活の問題を明確に発見し,その問題に対する最適な解決方法を見出し,実践する

 

 2時間目からは,生活を広く捉えながら,問題発見・解決していく様子や事例を紹介していきたいと思います. 

生活の問題発見・課題解決について考えよう!

こんにちは.


このブログにアクセスしていただいて,ありがとうございます.わたしは数年前まで,あるところで中学校の家庭科の先生をしていました.現在は教員から転職し,とある大学で家庭科の先生を目指す大学生を指導したり,家庭科をよりよく教えることについて研究をしています.

 

さて,このブログを読んでいるみなさんは家庭科の授業の記憶はありますか?


いろいろな調査でも明らかになっていますが,「みたらし団子作ったわ〜」「エプロン作ったわ〜」という記憶のように,調理実習被服実習と言われる,いわゆる手を動かす「実習」の記憶がほとんどのようです.

 

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家庭科という教科はあまり知られていませんが,実習をメインにして,なにかが作れるようになるという特性もありますが,本質的には「生活」をよりよくしていくために必要なスキルを育む教科です.実際に,みたらし団子をつくることができるスキルも大事なのですが,「生活の満足度」は爆上がりはしませんよね…生活をよりよくしていくには、「問題解決能力」が必要だと言われています.つまり,生活をよりよくするための「考える力」です.


生活もビジネスの世界や企業の経営と同じで、問題を発見して、課題を設定して、解決方法を考えて、実際に行動に移し、評価する、そんなプロセスを経て、よりよくなると考えられています.

 

また最近ではSNS(Tik Tok,InstagramTwitterなど)で,数秒から1分程度の短い動画で効率的に情報を伝えることが流行っているようです.調べてみましたが,「お風呂場のカビ取り」とか「時短料理レシピ」「絶対に入ってはいけない保険5選」などライフハック的な(すぐにできる)投稿をたくさん確認しました.確かに市民に関心があるからそういったコンテンツがあると思いますが,これらの情報も先ほどと同じように「みたらし団子が作れる」スキルと同じフェーズにあるように思います.

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人生の1/3〜1/2は家庭での生活です.近年,ワーク・ライフバランスという言葉をよく耳にしますが,ライフの充実や満足度は人生の幸福に大きく関わってきます.また,生活というものはとても複雑です.食べる,着る,住む,一緒に暮らす,お金を貯める・使う・備える,育てる,介護する…etc そんなに簡単に捉えられないのも事実です.

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そこで,このブログでは,家庭科の先生=生活に関する高度な専門性を兼ね備えた方々が実際にどのように生活の問題を発見し,課題を解決をしているかを紐解いてみたいと思います.シンプルに言うと,家庭科の先生の生活から,生活をよりよくするための思考法を学ぼう!ということです.様々な側面から生活を捉え直して,豊かな生活,幸せな人生・生活,満足度の高い生活,Quality of Lifeをあげていっていただけると嬉しいです.

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